相続税節税のための養子縁組と縁組意思

  • 2017.08.23 Wednesday
  • 08:41

相続税節税のための養子縁組と縁組意思に関する最高裁判決(平成29年1月31日)がなされましたので、ご紹介します。

 

その判旨は、

専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない

というものです。

 

民法802条1号

縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。

 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。

建物仮差押後の敷地譲渡と法定地上権

  • 2017.07.29 Saturday
  • 17:24

建物仮差押後の敷地譲渡と法定地上権の成否に関する最高裁判決(平成28年12月1日)がなされましたので、ご紹介いたします。

 

その判旨は、

地上建物仮差押が本執行移行した競売手続きにおける買受人が地上建物の所有権を取得した場合、土地及び地上建物が仮差押え時点で同一の所有者に属していたときは、差押時点では土地の譲渡により土地及び地上建物が同一人に属していなかったとしても、法定地上権が成立する

というものです。

 

民事執行法81条

 土地及びその上にある建物が債務者の所有に属する場合において、その土地又は建物の差押えがあり、その売却により所有者を異にするに至つたときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合においては、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

 

cf民法388条

 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

株主総会の決議による代表取締役選任

  • 2017.06.27 Tuesday
  • 09:32

株主総会の決議による代表取締役の選任に関し、最高裁決定(平成29年2月21日)が出ましたのでご報告いたします。

 

その要旨は、

取締役会設置会社における、取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは、有効である

というものです。

 

会社法295条

1 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。

2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。

 

会社法362条2項

取締役会は、次に掲げる職務を行う。

  代表取締役の選定及び解職

 

弁護士会照会への報告拒絶と弁護士会に対する不法行為の成否

  • 2017.05.03 Wednesday
  • 09:44

弁護士会照会(弁護士法23条の2第2項)に対し報告を拒絶した場合に、弁護士会に対し不法行為を構成しないという最高裁判決(平成29年10月18日)がなされたのでご紹介します。

 

その判旨は、

弁護士会照会の照会先は、正当な理由がない限り照会された事項について報告すべきものと解されるが、弁護士会が弁護士会照会の権限を付与されているのは、あくまで制度の適正な運用を図るためにすぎないので、報告を受けることにつき法律上保護される利益を有するものとは解されない。

したがって、報告拒絶行為が弁護士会に対する不法行為を構成することはない。

というものです。

 

※弁護士法23条の2

1 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。

2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

 

予めの合意に基づく第三者の再生債権を自働債権としてする相殺の可否

  • 2017.04.28 Friday
  • 10:25

予めの合意に基づき、第三者が有する再生債権を自働債権として、再生債務者に対する債務と相殺できるかに関し、最高裁判決(平成28年7月8日)がなされましたので、ご報告いたします。

 

その判旨は、

再生債務者に対して債務を負担する者が、当該債務に係る債権を受働債権とし、自らと完全親会社を同じくする他の株式会社が有する再生債権を自働債権としてする相殺は、これをすることができる旨の合意があらかじめされていた場合であっても、民事再生法92条1項によりすることができる相殺に該当しない

というものです。

 

※民事再生法92条1項

 再生債権者が再生手続開始当時再生債務者に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が第九十四条第一項に規定する債権届出期間の満了前に相殺に適するようになったときは、再生債権者は、当該債権届出期間内に限り、再生計画の定めるところによらないで、相殺をすることができる。債務が期限付であるときも、同様とする。

死亡保険金請求権の破産財団への帰属

  • 2017.03.13 Monday
  • 17:26

破産手続開始前に破産者を死亡保険金受取人とする生命保険契約が締結され、破産手続開始後に被保険者が死亡した場合に、死亡保険金請求権が破産財団へ帰属するかどうかについて、最高裁判決(平成28年4月28日)がなされましたので、ご報告いたします。

 

その判旨は、

第三者のためにする生命保険契約の死亡保険金受取人は、当該契約の成立により、当該契約で定める期間内に被保険者が死亡することを停止条件とする死亡保険金請求権を取得すると解され(最判昭和40年2月2日)、この死亡保険金請求権は、被保険者の死亡前であっても、一定の財産的価値を有することは否定できない。

したがって、破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は、破産法34条2項により破産財団に属する

というものです。

 

※破産法34条2項

 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。

認定司法書士の代理権の範囲

  • 2017.02.26 Sunday
  • 14:16

認定司法書士による裁判外の和解の代理権の範囲について、最高裁判決(平成28年6月27日)がなされましたので、ご報告いたします。

 

その判旨は、

債務整理を依頼された認定司法書士は、個別の債権の価額が140万円を超える場合には、その債権にかかる裁判外の和解について代理することができない

というものです。

 

※司法書士法3条1項

 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

  七 民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法 の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。

 

※裁判所法33条1項

 簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。
  一 訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)

押印に代えて花押が書かれた遺言書の効力

  • 2017.02.13 Monday
  • 13:52

押印に代えて花押が書かれた遺言書の効力に関する最高裁判決(平成28年6月3日)をご紹介します。

 

その判旨は、

我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文章を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。

以上によれば、花押を書くことは、印章による押印と同視することはできず、民法968条1項の押印の要件を満たさない。

というものです。

 

※民法968条1項

 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 

※民法960条

 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

 

※最判平成1年2月16日

 押印としては、遺言者が印章に代えて拇指その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺すること(以下「指印」という。)をもって足りる。

名誉棄損

  • 2016.11.03 Thursday
  • 20:39

今回は、名誉棄損によ不法行為の成否について整理したいと思います。

名誉棄損による損害賠償請求の可否については、以下の順序で検討することになります。

 

ー匆馘評価の低下の有無

  一般の読者の普通の注意と読み方を基準に判断

  →他人の社会的評価を低下させるものであれば、名誉棄損行為

違法性阻却・故意阻却の有無

饂実の適示と意見・論評の区別

  直接的な場合だけでなく、間接的・婉曲的な場合であっても

  →証拠等をもってその存否を決することが可能な特定の事項を主張するものは事実の摘示(最判H9・9.9)。

  ※不法行為による名誉棄損は、事実の摘示、意見・論評を問わない。

鬘畛実の摘示による名誉棄損

   その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、もっぱら公益を図る目的

   →摘示事実の重要な部分が真実であれば違法性阻却

    そうでなくとも摘事事実の重要な部分を真実と信ずる相当の理由があれば、故意・過失阻却(最判S41.6.23)

 b意見・論評の表明による名誉棄損

   その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、もっぱら公益を図る目的

   →人身攻撃に及ぶなど意見・論評の域を逸脱したものでない限り

   →前提事実の重要な部分が真実であれば違法性阻却

    そうでなくとも前提事実の重要な部分を真実と信ずる相当の理由あれば、故意・過失阻却(最判H9.9.9)

 

 

被勾留者に対する国の安全配慮義務

  • 2016.10.28 Friday
  • 20:34

被勾留者に対する国の安全配慮義務に関する最高裁判決(平成28年4月21日)がありましたので、ご紹介いたします。

 

その判旨は、

未決勾留による拘禁関係は、勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され、法令等の規定に従って規律されるものである。

そうすると、未決勾留による拘禁関係は、当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上の安全配慮義務を負うべき特別な社会的接触の関係とは言えない。

したがって、国は、国家賠償法に基づく損害賠償責任を別として、拘置所に収容された被勾留者に対し、信義則上の安全配慮義務を負わない。

というものです。