会社分割と信義則

  • 2018.11.23 Friday
  • 14:58

吸収分割により賃借人の地位が承継された場合において、賃借権譲渡禁止特約に基づく解除に伴う違約金請求についての最高裁決定(平成29年12月19日)がなされたので、ご紹介いたします。

 

その判旨は、

吸収分割契約の定めに従い、吸収分割承継会社が吸収分割会社の賃貸借契約に係る権利義務を承継する場合において、

)楫鏃物を長期にわたり吸収分割会社に賃貸し、その賃料によって本件建物の建築費用を回収することを予定していたこと

賃借権譲渡禁止特約違反による解除に伴う違約金条項は、賃借人の変更による不利益を回避する意図であったこと

5杣分割承継会社は、支払い能力を欠くことが明らかであること

ぐ稾鷆盧銚△狼杣分割の効力発生後に解除の意思表示によって発生するので、吸収分割について異議を述べることができたとはいえないこと

から、吸収分割がされたことを理由に違約金債権に係る債務を負わないと主張することは、信義則に反し許されず、吸収分割後も、吸収分割会社に対して違約金債権に係る債務の履行を請求することができる

というものです。

 

会社法789条1項

1 次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める債権者は、消滅株式会社等に対し、吸収合併等について異議を述べることができる。

 二 吸収分割をする場合 吸収分割後吸収分割株式会社に対して債務の履行(当該債務の保証人として吸収分割承継会社と連帯して負担する保証債務の履行を含む。)を請求することができない吸収分割株式会社の債権者(第758条第8号又は第760条第7号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、吸収分割株式会社の債権者)

2 前項の規定により消滅株式会社等の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には、消滅株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者(同項の規定により異議を述べることができるものに限る。)には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。

 四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

4 債権者が第2項第4号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該吸収合併等について承認をしたものとみなす。

5 債権者が第2項第4号の期間内に異議を述べたときは、消滅株式会社等は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該吸収合併等をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。

 

 

 

子の引渡し

  • 2018.11.19 Monday
  • 19:10

国境を越えて連れ去りをされた子につき、ハーグ条約実施法に基づき、子を常居所地国に返還することを命ずる終局決定が確定したが、この決定に従わずに子が監護されている場合の人身保護請求に関し、最高裁判決(平成30年3月15日)がなされたのでご紹介します。

 

その判旨は、

‥該子による意思決定がその自由意思に基づくものといえるか否かを判断するに当たっては、基本的に、当該子が意思決定の重大性や困難性に鑑みて必要とされる多面的、客観的な情報を十分に取得している状況にあるか否か、連れ去りをした親が当該子に対して不当な心理的影響を及ぼしていないかなどといった点を慎重に検討すべきである。

→被拘束者(13歳)は、拘束者の連れ去りによって11歳3か月の時に初来日し、以降、拘束者に大きく依存して生活

 拘束者は、子の返還の代替執行に際して、被拘束者の面前で激しく抵抗

→被拘束者が自由意思に基づいて拘束者の下にとどまっているとはいえない特段の事情がある

→拘束者の被拘束者に対する監護は、人身保護法及び同規則にいう拘束に当たる

⊂綉終局決定が確定したにもかかわらず、拘束者がこれに従わないまま当該子を監護することにより拘束している場合には、その監護を解くことが著しく不当であると認められるような特段の事情のない限り、拘束者による当該子に対する拘束に顕著な違法性がある

というものです。

 

人身保護法2条

1 法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる。

2 何人も被拘束者のために、前項の請求をすることができる。

 

人身保護規則4条

法第2条の請求は、拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り、これをすることができる。但し、他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは、その方法によつて相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ、これをすることができない。

 

最判昭和61年7月18日

意思能力がある子の監護について、当該子が自由意思に基づいて監護者の下にとどまっているとはいえない特段の事情があるときは、上記監護者の当該子に対する監護は、人身保護法及び同規則にいう拘束に当たる

抵当権の時効消滅

  • 2018.11.15 Thursday
  • 08:44

被担保債権が免責された場合における抵当権の時効消滅について、最高裁判決(平成30年2月23日)がなされたのでご紹介します。

 

その要旨は、

抵当権の被担保債権が免責許可決定の効力を受ける場合には、民法396条は適用されず、債務者及び抵当権設定者に対する関係においても、民法167条2項所定の20年の消滅時効にかかる

というものです。

 

民法396条

 抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。

 

民法167条2項

 債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。

明渡猶予制度

  • 2018.10.06 Saturday
  • 16:36

明渡猶予制度(民法395条1項)の適用に関し、最高裁決定(平成30年4月17日)がなされたので、ご紹介いたします。

 

その要旨は、

担保不動産競売手続開始前から建物を使用収益する、担保権者に対抗できない賃借権者は、当該賃借権の設定が滞納処分による差押後であっても、競売手続の開始前から使用収益する者(民法395条1項1号)に当たる

というものです。

 

民法395条1項

 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。

一 競売手続の開始前から使用又は収益をする者

 

不動産と商事留置権

  • 2018.07.14 Saturday
  • 15:58

不動産が商事留置権の目的物に含まれるかについて、最高裁判決(平成29年12月14日)がなされたのでご紹介します。

 

その判旨は、

不動産は、商法521条が商人間の留置権の目的物として定める「物」に当たる

というものです。

訴訟救助で猶予された費用等の相手方当事者からの取立

  • 2018.06.23 Saturday
  • 10:49

訴訟救助で猶予された費用等の相手方当事者からの取立について、最高裁決定(平成29年9月5日)がなされたので、ご紹介いたします。

 

その要旨は、

訴訟救助で猶予された費用等につき、裁判所が相手方当事者に対して民訴法85条前段の取立をする場合、当該相手方当事者が、支出した費用のうち受救助者の負担すべき費用との差引計算を求めている事情の下で、差引計算を求める範囲を明らかにするよう求めることのないまま、受救助者に猶予した費用に当該相手方当事者の負担割合を乗じた額を取り立てることができるとする判断は違法である

というものです。

 

民事訴訟法第八十五条

 訴訟上の救助の決定を受けた者に支払を猶予した費用は、これを負担することとされた相手方から直接に取り立てることができる。この場合において、弁護士又は執行官は、報酬又は手数料及び費用について、訴訟上の救助の決定を受けた者に代わり、第七十一条第一項、第七十二条又は第七十三条第一項の申立て及び強制執行をすることができる。

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    弁護士法25条1号違反

    • 2018.06.13 Wednesday
    • 09:25

    弁護士法25条1号違反に関し、最高裁判決(最判平成29年10月5日)がなされたのでご紹介いたします。

     

    その要旨は、

    (杆郢遼25条1号違反の訴訟代理人から委任を受けた訴訟復代理人の訴訟行為について、相手方当事者は、訴訟復代理人の選任が同号違反として、異議を述べ、裁判所に対しその行為の排除を求めることができる。

    ∧杆郢遼25条1号違反の訴訟行為について、相手方当事者は、訴訟行為を排除する旨の裁判を求める申立権を有する。

    J杆郢遼25条1号違反による訴訟行為排除決定に対し、排除された当事者は、即時抗告できる(民訴法25条5項の類推適用)。

    て鰻萃蠅紡个掘排除された訴訟代理人は、自ら即時抗告できない。

    デ忙坐阿稜忙瑳圓ら依頼を受けた弁護士が、破産管財人を相手方とする訴訟において、訴訟代理人として訴訟行為を行うことは、弁護士法25条1号に違反する。

    というものです。

     

    第二十五条 弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない。ただし、第三号及び第九号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。

    一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

     

    最判昭和38年10月30日

    弁護士法25条1号違反の訴訟行為について、相手方当事者は、異議を述べ、裁判所に対しその行為の排除を求めることができる。

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      相続債権者による財産分離の申立て

      • 2018.05.08 Tuesday
      • 13:06

      相続債権者からの申立てに基づき、相続財産につき財産分離の家事審判が出来る場合について、最高裁決定(平成29年11月28日)が出ましたのでご報告いたします。

       

      その内容は、

      相続人がその固有財産について債務超過の状態にあり又はそのような状態に陥るおそれがあることなどから、相続財産と相続人の固有財産とが混合することによって相続債権者等がその債権の全部又は一部の弁済を受けることが困難となるおそれがあると認められる場合に、民法941条1項の規定に基づき、財産分離を命ずることができる

      というものです。

       

      民法第941条

       相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後も、同様とする。

      弁護士が職務を行えない行為(弁護士法25条1号)

      • 2018.04.06 Friday
      • 09:08

      弁護士が職務を行いえない行為(弁護士法25条1号)に関し、最高裁決定(平成29年10月5日)が出ましたので、ご紹介いたします。

       

      その判旨は、

      (杆郢遼。横犠鬘厩罎飽稟燭靴徳幣拌緲人となった弁護士から委任を受けた訴訟復代理人の訴訟行為については、相手方である当事者は、裁判所に対し、上記訴訟行為を排除する旨の裁判を求める申立権を有する

      ∧杆郢遼。横犠鬘厩羂稟燭鰺由として訴訟行為を排除する旨の決定に対しては、自らの訴訟代理人又は訴訟復代理人の訴訟行為を排除するものとされた当事者は、即時抗告をすることができる(民訴法25条5項)

      ➂上記決定に対しては、訴訟行為を排除するものとされた訴訟代理人又は訴訟復代理人は、自らを抗告人とする即時抗告をすることはできない

      で忙佐漂眇佑鮓狭陲箸垢訌幣戮砲いて、破産手続開始前に破産者から再生手続開始の申立て等について委任を受けた弁護士が、被告の訴訟代理人として訴訟行為を行うことは、弁護士法25条1号に違反する

      というものです。

       

      弁護士法25条

      弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない。ただし、第三号及び第九号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。

      一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

       

      最高裁判決昭和38年10月30日

      弁護士法25条1号に違反する訴訟行為については、相手方である当事者は、これに異議を述べ、裁判所に対しその行為の排除を求めることができる

      民事再生における無償行為否認

      • 2018.03.30 Friday
      • 11:30

      民事再生における無償行為否認(民再127条3項)の要件に関し、最高裁判決(平成29年11月16日)が出ましたので、ご紹介いたします。

       

      その要旨は、

      再生債務者が無償行為等の時に債務超過であること又はその無償行為等により債務超過になることは、民意再生法127条3項に基づく否認権行使の要件ではない

      とするものです。

       

      民事再生法127条3項

      再生債務者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、再生手続開始後、再生債務者財産のために否認することができる。