株主総会の決議による代表取締役選任

  • 2017.06.27 Tuesday
  • 09:32

株主総会の決議による代表取締役の選任に関し、最高裁決定(平成29年2月21日)が出ましたのでご報告いたします。

 

その要旨は、

取締役会設置会社における、取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは、有効である

というものです。

 

会社法295条

1 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。

2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。

 

会社法362条2項

取締役会は、次に掲げる職務を行う。

  代表取締役の選定及び解職

 

予めの合意に基づく第三者の再生債権を自働債権としてする相殺の可否

  • 2017.04.28 Friday
  • 10:25

予めの合意に基づき、第三者が有する再生債権を自働債権として、再生債務者に対する債務と相殺できるかに関し、最高裁判決(平成28年7月8日)がなされましたので、ご報告いたします。

 

その判旨は、

再生債務者に対して債務を負担する者が、当該債務に係る債権を受働債権とし、自らと完全親会社を同じくする他の株式会社が有する再生債権を自働債権としてする相殺は、これをすることができる旨の合意があらかじめされていた場合であっても、民事再生法92条1項によりすることができる相殺に該当しない

というものです。

 

※民事再生法92条1項

 再生債権者が再生手続開始当時再生債務者に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が第九十四条第一項に規定する債権届出期間の満了前に相殺に適するようになったときは、再生債権者は、当該債権届出期間内に限り、再生計画の定めるところによらないで、相殺をすることができる。債務が期限付であるときも、同様とする。

死亡保険金請求権の破産財団への帰属

  • 2017.03.13 Monday
  • 17:26

破産手続開始前に破産者を死亡保険金受取人とする生命保険契約が締結され、破産手続開始後に被保険者が死亡した場合に、死亡保険金請求権が破産財団へ帰属するかどうかについて、最高裁判決(平成28年4月28日)がなされましたので、ご報告いたします。

 

その判旨は、

第三者のためにする生命保険契約の死亡保険金受取人は、当該契約の成立により、当該契約で定める期間内に被保険者が死亡することを停止条件とする死亡保険金請求権を取得すると解され(最判昭和40年2月2日)、この死亡保険金請求権は、被保険者の死亡前であっても、一定の財産的価値を有することは否定できない。

したがって、破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は、破産法34条2項により破産財団に属する

というものです。

 

※破産法34条2項

 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。

認定司法書士の代理権の範囲

  • 2017.02.26 Sunday
  • 14:16

認定司法書士による裁判外の和解の代理権の範囲について、最高裁判決(平成28年6月27日)がなされましたので、ご報告いたします。

 

その判旨は、

債務整理を依頼された認定司法書士は、個別の債権の価額が140万円を超える場合には、その債権にかかる裁判外の和解について代理することができない

というものです。

 

※司法書士法3条1項

 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

  七 民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法 の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。

 

※裁判所法33条1項

 簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。
  一 訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)

名誉棄損

  • 2016.11.03 Thursday
  • 20:39

今回は、名誉棄損によ不法行為の成否について整理したいと思います。

名誉棄損による損害賠償請求の可否については、以下の順序で検討することになります。

 

ー匆馘評価の低下の有無

  一般の読者の普通の注意と読み方を基準に判断

  →他人の社会的評価を低下させるものであれば、名誉棄損行為

違法性阻却・故意阻却の有無

饂実の適示と意見・論評の区別

  直接的な場合だけでなく、間接的・婉曲的な場合であっても

  →証拠等をもってその存否を決することが可能な特定の事項を主張するものは事実の摘示(最判H9・9.9)。

  ※不法行為による名誉棄損は、事実の摘示、意見・論評を問わない。

鬘畛実の摘示による名誉棄損

   その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、もっぱら公益を図る目的

   →摘示事実の重要な部分が真実であれば違法性阻却

    そうでなくとも摘事事実の重要な部分を真実と信ずる相当の理由があれば、故意・過失阻却(最判S41.6.23)

 b意見・論評の表明による名誉棄損

   その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、もっぱら公益を図る目的

   →人身攻撃に及ぶなど意見・論評の域を逸脱したものでない限り

   →前提事実の重要な部分が真実であれば違法性阻却

    そうでなくとも前提事実の重要な部分を真実と信ずる相当の理由あれば、故意・過失阻却(最判H9.9.9)

 

 

被勾留者に対する国の安全配慮義務

  • 2016.10.28 Friday
  • 20:34

被勾留者に対する国の安全配慮義務に関する最高裁判決(平成28年4月21日)がありましたので、ご紹介いたします。

 

その判旨は、

未決勾留による拘禁関係は、勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され、法令等の規定に従って規律されるものである。

そうすると、未決勾留による拘禁関係は、当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上の安全配慮義務を負うべき特別な社会的接触の関係とは言えない。

したがって、国は、国家賠償法に基づく損害賠償責任を別として、拘置所に収容された被勾留者に対し、信義則上の安全配慮義務を負わない。

というものです。

国際裁判管轄権が認められても訴えが却下される特別の事情

  • 2016.09.30 Friday
  • 09:30

民事訴訟法3条の9に基づき、訴えを却下を正当とした最高裁判決(平成28年3月10日)がありましたので、ご紹介いたします。

 

民事訴訟法3条の9は、日本に国際裁判管轄権が認められても、特別の事情があるときは訴えを却下することができると定めています。

そして、上記最高裁判決は、

)楫鐐幣戮別件米国訴訟にかかる紛争から派生した紛争にかかるものであること

⊂攀鯤法が主に米国に所在すること

E事者が米国での訴訟を想定していたこと

な胴颪任料幣拂鶺が原告に過大な負担を課するものではないこと

テ本での裁判は、被告に過大な負担を課することになること

から、特別の事情があるとしました。

 

※民事訴訟法3条の9

 裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合(日本の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意に基づき訴えが提起された場合を除く。)においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、その訴えの全部又は一部を却下することができる。

認知症の方の家族の賠償責任

  • 2016.09.26 Monday
  • 00:59

3月にお伝えした認知症の方の家族の賠償責任についての最高裁判決(平成28年3月1日)の内容をご紹介いたします。

 

その判旨は、以下のとおりです。

 

民法752条の規定をもって民法714条1項にいう責任無能力者を監督する義務を定めたものということはできず、他に夫婦の一方が相手方の法定の監督義務者であるとする実定法上の根拠は見当たらない。

したがって、精神障害者と同居する配偶者であるからと言って、その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできない。

もっとも、法定の監督義務者に該当しないものであっても、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を越えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、衡平の見地から法定の監督義務を負う者と同視してその者に対し民法714条に基づく損害賠償責任を問うことができるとするのが相当であり、このような者については、民法714条1項が類推適用される。

その上で、法定の監督義務者に準ずべき者にあたるか否かは、その者自身の生活状況や心身の状況などとともに、精神障害者との親族関係の有無・濃淡、同居の有無その他の日常的な接触の程度、精神障害者の財産管理への関与の状況などその者と精神障害者との関わりの実情、精神障害者の心身の状況や日常生活における問題行動の有無・内容、これらに対応して行われている監護や介護の実態など諸般の事情を総合考慮して、その者が精神障害者を現に監督しているかあるいは監督することが可能かつ容易であることなど衡平の見地からその者に対し精神障害者の行為にかかる責任を問うのが相当といえる客観的状況が認められるか否かという観点から判断すべきである。

 

そして、被告Y1は、長年A(精神障害者)と同居していた妻であり、子らの了解を得てAの介護にあたっていたものの、事故当時85歳で左右下肢に麻ひ拘縮があり要介護1の認定を受けており、Aの介護も子の妻の補助を受けて行っていたのであるから、第三者に対する加害行為を防止するためにAを監督することが現実的に可能な状況にあったということはできず、その監督義務を引き受けていたとみるべき特段の事情があったとはいえない。

また、被告Y2は、Aの子であり、Aの介護に関する話し合いに加わり、その妻がA宅の近隣に住んでA宅に通いながらY1によるAの介護を補助していたものの、Y2自身はA宅から離れた場所に住んでいたもので、本件事故まで20年以上もAと同居しておらず、本件事故直前の時期においても1箇月に3回程度週末にA宅を訪ねていたにすぎない。そうすると、Y2はAの第三者に対する加害行為を防止するためにAを監督することが可能な状況にあったということはできず、その監督を引き受けていたとみるべき特段の事情があったとはいえない。

 

※民法714条1項

 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

 

 民法752条

 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

特別利害関係人が参加した議決の効力

  • 2016.09.25 Sunday
  • 09:20

特別利害関係人が参加してなされた漁協の理事会の議決の効力につき、最高裁の判決(平成28年1月22日)がありましたので、ご紹介いたします。

 

その判旨は、

水産業協同組合法37条2項の趣旨は、理事会の議決の公正を図り、漁協の利益を保護するためであるから、特別利害関係人が議決権を行使した場合であっても、その議決権の行使により議決の結果に変動が生ずることがないときは、議決の効力が失われるものではない。

そうすると、漁協の理事会の議決が、当該議決について特別利害関係を有する理事が加わってされたものであっても、当該理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存するときは、議決の効力は否定されない

というものです。

 

なお、企業組合の理事会の議決につき、同様の最高裁判決(昭和54年2月23日)や、会社の取締役会の議決につき、特別利害関係人が議長として参加した場合の議決の効力につき否定した東京高裁判決(平成8年2月8日)などがあります。

 

※水産業協同組合法37条

1 理事会の議決は、議決に加わることができる理事の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。

2  前項の議決について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。

 

 

賃金や退職金の変更に対する労働者の同意

  • 2016.08.01 Monday
  • 17:38

賃金や退職金の変更に対する労働者の同意について、最高裁判決(平成28年2月19日)が出たので、ご紹介いたします。

 

その判旨は、

賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、労働者が使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれており、自らの意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界があることに照らせば、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべき

というものです。

 

賃金や退職金の変更について労働者の同意を取る場合には、単に同意を取るだけでは足りず、不利益の内容・程度について、労働者へ情報提供・説明が必要ということになります。