相続開始後認知による遺産分割請求における支払額の算定基礎となる遺産の価額

  • 2020.03.21 Saturday
  • 11:36

相続開始後認知によって相続人となった者が遺産分割を請求する場合に、他の共同相続人が既に遺産分割していたときの民法910条により支払われる価額の算定基礎となる遺産の価額についての最高裁判決(令和元年6月7日)がなされましたので、ご紹介いたします。

 

その要旨は、

遺産分割は、積極財産のみを対象とするものであって、消極財産である相続債務は、認知された者を含む各共同相続人に当然に承継され、遺産分割の対象とならない。

よって、相続開始後認知によって相続人となった者が遺産分割を請求する場合に、他の共同相続人が既に遺産分割していたときの民法910条により支払われる価額の算定基礎となる遺産の価額は,当該分割の対象とされた積極財産の価額である

というものです。

なお、他の相続人により相続債務が既に弁済されていた場合は、弁済者の被認知者に対する不当利得返還請求の問題になると考えられます。

 

 

民法910条

 相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

子の引渡の間接強制と権利濫用

  • 2020.02.03 Monday
  • 19:16

子の引渡の間接強制につき権利濫用とした最高裁決定(平成31年4月26日)がなされましたので、ご紹介いたします。

 

その要旨は、

子の引渡を命ずる審判に基づく引渡執行の際、子が引渡しを拒絶して呼吸困難に陥りそうになったため、執行を続けるとその心身に重大な悪影響を及ぼす恐れがあるとして執行不能となり、

また、人身保護請求においても、子が引渡しを拒絶する意思を明確に表示し、自由意思に基づいてとどまっているものとして請求が棄却された場合、

子の心身に有害な影響を及ぼすことないように配慮しつつ引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる債務者の行為は、具体的に想定することが困難というべきである。

このような状況下において、間接強制によって子の引き渡しを強制することは、過酷な執行として許されないと解され、権利濫用に当たるというほかない。

というものです。

 

 

養親の相続財産全部の包括受遺者と養子縁組無効の訴え

  • 2020.01.25 Saturday
  • 08:54

養親の相続財産全部の包括受遺者が養子縁組無効の訴えにつき訴えの利益を有するかにつき、最高裁判決(平成31年3月5日)がなされましたので、ご紹介いたします。

 

その判旨は、

養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者は、直ちに養子縁組無効の訴えにつき法律上の利益を有するとは言えない

というものです。

 

 

最判昭和63年3月1日

養子縁組無効の訴えは、縁組当事者以外の者も提起することができるが、当該養子縁組の無効により自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることのないものは、訴えにつき法律上の利益を有しない。

 

人事訴訟法24条 

人事訴訟の確定判決は、民事訴訟法第115条第1項の規定にかかわらず、第三者に対してもその効力を有する。

 

不貞の相手方に対する離婚に伴う慰謝料請求

  • 2020.01.10 Friday
  • 13:44

不貞の相手方に対する離婚に伴う慰謝料を請求できるかについて、最高裁判決(平成31年2月19日)が出ましたので、ご報告いたします。

 

その判旨は、

夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がない限り、不貞行為を理由とする慰謝料は別として、離婚に伴う慰謝料を請求することはできない

というものです。

 

不貞行為の相手方に対する損害賠償請求事件の家庭裁判所への移送の可否

  • 2019.12.15 Sunday
  • 15:22

離婚訴訟の被告が、原告の不貞行為を主張して棄却を求めている場合において、被告が提起した不貞行為の相手方に対する損害賠償請求事件を家庭裁判所に移送できるかについて、最高裁決定(平成31年2月12日)が出ましたので、ご紹介いたします。

 

その要旨は、

離婚訴訟の被告が、原告の不貞行為を主張して棄却を求めている場合において、被告による不貞行為の相手方に対する、不貞行為に基づく損害賠償請求訴訟は、人訴法8条1項にいう「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟」に当たる

というものです。

 

 

人訴法8条1項

家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟の係属する第一審裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより、当該訴訟をその家庭裁判所に移送することができる。この場合においては、その移送を受けた家庭裁判所は、当該損害の賠償に関する請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判をすることができる。

 

子の引渡し

  • 2018.11.19 Monday
  • 19:10

国境を越えて連れ去りをされた子につき、ハーグ条約実施法に基づき、子を常居所地国に返還することを命ずる終局決定が確定したが、この決定に従わずに子が監護されている場合の人身保護請求に関し、最高裁判決(平成30年3月15日)がなされたのでご紹介します。

 

その判旨は、

‥該子による意思決定がその自由意思に基づくものといえるか否かを判断するに当たっては、基本的に、当該子が意思決定の重大性や困難性に鑑みて必要とされる多面的、客観的な情報を十分に取得している状況にあるか否か、連れ去りをした親が当該子に対して不当な心理的影響を及ぼしていないかなどといった点を慎重に検討すべきである。

→被拘束者(13歳)は、拘束者の連れ去りによって11歳3か月の時に初来日し、以降、拘束者に大きく依存して生活

 拘束者は、子の返還の代替執行に際して、被拘束者の面前で激しく抵抗

→被拘束者が自由意思に基づいて拘束者の下にとどまっているとはいえない特段の事情がある

→拘束者の被拘束者に対する監護は、人身保護法及び同規則にいう拘束に当たる

⊂綉終局決定が確定したにもかかわらず、拘束者がこれに従わないまま当該子を監護することにより拘束している場合には、その監護を解くことが著しく不当であると認められるような特段の事情のない限り、拘束者による当該子に対する拘束に顕著な違法性がある

というものです。

 

人身保護法2条

1 法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる。

2 何人も被拘束者のために、前項の請求をすることができる。

 

人身保護規則4条

法第2条の請求は、拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り、これをすることができる。但し、他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは、その方法によつて相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ、これをすることができない。

 

最判昭和61年7月18日

意思能力がある子の監護について、当該子が自由意思に基づいて監護者の下にとどまっているとはいえない特段の事情があるときは、上記監護者の当該子に対する監護は、人身保護法及び同規則にいう拘束に当たる

相続債権者による財産分離の申立て

  • 2018.05.08 Tuesday
  • 13:06

相続債権者からの申立てに基づき、相続財産につき財産分離の家事審判が出来る場合について、最高裁決定(平成29年11月28日)が出ましたのでご報告いたします。

 

その内容は、

相続人がその固有財産について債務超過の状態にあり又はそのような状態に陥るおそれがあることなどから、相続財産と相続人の固有財産とが混合することによって相続債権者等がその債権の全部又は一部の弁済を受けることが困難となるおそれがあると認められる場合に、民法941条1項の規定に基づき、財産分離を命ずることができる

というものです。

 

民法第941条

 相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後も、同様とする。

相続税節税のための養子縁組と縁組意思

  • 2017.08.23 Wednesday
  • 08:41

相続税節税のための養子縁組と縁組意思に関する最高裁判決(平成29年1月31日)がなされましたので、ご紹介します。

 

その判旨は、

専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない

というものです。

 

民法802条1号

縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。

 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。

押印に代えて花押が書かれた遺言書の効力

  • 2017.02.13 Monday
  • 13:52

押印に代えて花押が書かれた遺言書の効力に関する最高裁判決(平成28年6月3日)をご紹介します。

 

その判旨は、

我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文章を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。

以上によれば、花押を書くことは、印章による押印と同視することはできず、民法968条1項の押印の要件を満たさない。

というものです。

 

※民法968条1項

 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 

※民法960条

 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

 

※最判平成1年2月16日

 押印としては、遺言者が印章に代えて拇指その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺すること(以下「指印」という。)をもって足りる。

相続開始後認知された者の価額支払請求権

  • 2016.08.08 Monday
  • 15:58

相続開始後に認知された者の遺産分割に関する価額支払請求権(民法910条)について、最高裁判決(平成28年2月26日)が出たので、ご紹介いたします。

 

その判旨は、

 

^篁困硫然杙残蠅隆霆犹は、価額支払請求時

価額支払債務の履行遅滞は、履行請求を受けた時から

というものです。

 

,陵由として、請求時までの遺産の価額の変動を他の共同相続人が支払うべき金額に反映させるとともに、その時点で直ちに当該金額を算定し得るものとすることが、当事者間の衡平の観点から相当であるとしています。

また、△陵由として、価額支払債務は、期限の定めのない債務であって、履行の請求を受けた時に遅滞に陥ると解するのが相当であるとしています。

 

※民法910条

相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

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