国際裁判管轄権が認められても訴えが却下される特別の事情

  • 2016.09.30 Friday
  • 09:30

民事訴訟法3条の9に基づき、訴えを却下を正当とした最高裁判決(平成28年3月10日)がありましたので、ご紹介いたします。

 

民事訴訟法3条の9は、日本に国際裁判管轄権が認められても、特別の事情があるときは訴えを却下することができると定めています。

そして、上記最高裁判決は、

)楫鐐幣戮別件米国訴訟にかかる紛争から派生した紛争にかかるものであること

⊂攀鯤法が主に米国に所在すること

E事者が米国での訴訟を想定していたこと

な胴颪任料幣拂鶺が原告に過大な負担を課するものではないこと

テ本での裁判は、被告に過大な負担を課することになること

から、特別の事情があるとしました。

 

※民事訴訟法3条の9

 裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合(日本の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意に基づき訴えが提起された場合を除く。)においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、その訴えの全部又は一部を却下することができる。

認知症の方の家族の賠償責任

  • 2016.09.26 Monday
  • 00:59

3月にお伝えした認知症の方の家族の賠償責任についての最高裁判決(平成28年3月1日)の内容をご紹介いたします。

 

その判旨は、以下のとおりです。

 

民法752条の規定をもって民法714条1項にいう責任無能力者を監督する義務を定めたものということはできず、他に夫婦の一方が相手方の法定の監督義務者であるとする実定法上の根拠は見当たらない。

したがって、精神障害者と同居する配偶者であるからと言って、その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできない。

もっとも、法定の監督義務者に該当しないものであっても、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を越えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、衡平の見地から法定の監督義務を負う者と同視してその者に対し民法714条に基づく損害賠償責任を問うことができるとするのが相当であり、このような者については、民法714条1項が類推適用される。

その上で、法定の監督義務者に準ずべき者にあたるか否かは、その者自身の生活状況や心身の状況などとともに、精神障害者との親族関係の有無・濃淡、同居の有無その他の日常的な接触の程度、精神障害者の財産管理への関与の状況などその者と精神障害者との関わりの実情、精神障害者の心身の状況や日常生活における問題行動の有無・内容、これらに対応して行われている監護や介護の実態など諸般の事情を総合考慮して、その者が精神障害者を現に監督しているかあるいは監督することが可能かつ容易であることなど衡平の見地からその者に対し精神障害者の行為にかかる責任を問うのが相当といえる客観的状況が認められるか否かという観点から判断すべきである。

 

そして、被告Y1は、長年A(精神障害者)と同居していた妻であり、子らの了解を得てAの介護にあたっていたものの、事故当時85歳で左右下肢に麻ひ拘縮があり要介護1の認定を受けており、Aの介護も子の妻の補助を受けて行っていたのであるから、第三者に対する加害行為を防止するためにAを監督することが現実的に可能な状況にあったということはできず、その監督義務を引き受けていたとみるべき特段の事情があったとはいえない。

また、被告Y2は、Aの子であり、Aの介護に関する話し合いに加わり、その妻がA宅の近隣に住んでA宅に通いながらY1によるAの介護を補助していたものの、Y2自身はA宅から離れた場所に住んでいたもので、本件事故まで20年以上もAと同居しておらず、本件事故直前の時期においても1箇月に3回程度週末にA宅を訪ねていたにすぎない。そうすると、Y2はAの第三者に対する加害行為を防止するためにAを監督することが可能な状況にあったということはできず、その監督を引き受けていたとみるべき特段の事情があったとはいえない。

 

※民法714条1項

 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

 

 民法752条

 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

特別利害関係人が参加した議決の効力

  • 2016.09.25 Sunday
  • 09:20

特別利害関係人が参加してなされた漁協の理事会の議決の効力につき、最高裁の判決(平成28年1月22日)がありましたので、ご紹介いたします。

 

その判旨は、

水産業協同組合法37条2項の趣旨は、理事会の議決の公正を図り、漁協の利益を保護するためであるから、特別利害関係人が議決権を行使した場合であっても、その議決権の行使により議決の結果に変動が生ずることがないときは、議決の効力が失われるものではない。

そうすると、漁協の理事会の議決が、当該議決について特別利害関係を有する理事が加わってされたものであっても、当該理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存するときは、議決の効力は否定されない

というものです。

 

なお、企業組合の理事会の議決につき、同様の最高裁判決(昭和54年2月23日)や、会社の取締役会の議決につき、特別利害関係人が議長として参加した場合の議決の効力につき否定した東京高裁判決(平成8年2月8日)などがあります。

 

※水産業協同組合法37条

1 理事会の議決は、議決に加わることができる理事の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。

2  前項の議決について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。

 

 

相続開始後認知された者の価額支払請求権

  • 2016.08.08 Monday
  • 15:58

相続開始後に認知された者の遺産分割に関する価額支払請求権(民法910条)について、最高裁判決(平成28年2月26日)が出たので、ご紹介いたします。

 

その判旨は、

 

^篁困硫然杙残蠅隆霆犹は、価額支払請求時

価額支払債務の履行遅滞は、履行請求を受けた時から

というものです。

 

,陵由として、請求時までの遺産の価額の変動を他の共同相続人が支払うべき金額に反映させるとともに、その時点で直ちに当該金額を算定し得るものとすることが、当事者間の衡平の観点から相当であるとしています。

また、△陵由として、価額支払債務は、期限の定めのない債務であって、履行の請求を受けた時に遅滞に陥ると解するのが相当であるとしています。

 

※民法910条

相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

賃金や退職金の変更に対する労働者の同意

  • 2016.08.01 Monday
  • 17:38

賃金や退職金の変更に対する労働者の同意について、最高裁判決(平成28年2月19日)が出たので、ご紹介いたします。

 

その判旨は、

賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、労働者が使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれており、自らの意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界があることに照らせば、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべき

というものです。

 

賃金や退職金の変更について労働者の同意を取る場合には、単に同意を取るだけでは足りず、不利益の内容・程度について、労働者へ情報提供・説明が必要ということになります。

 

配当異議訴訟で原告敗訴した場合の充当方法

  • 2016.07.17 Sunday
  • 18:47

配当異議訴訟で原告敗訴した場合の充当方法に関する最高裁判決(平成27年10月27日)がありましたので、ご紹介します。

その判旨は
担保不動産の競売手続における根抵当権者に対する配当について配当異議の訴えが提起され、その訴えにおいて根抵当権者が勝訴した場合、供託されていた供託金は、配当の実施として供託金の支払委託がされた時点における被担保債権に充当される。
というものです。

 

※民事執行法

89条2項

執行裁判所は、配当異議の申出のない部分に限り、配当を実施しなければならない。

90条1項

配当異議の申出をした債権者…は、配当異議の訴えを提起しなければならない。

91条1項

配当等を受けるべき債権者の債権について次に掲げる事由があるときは、裁判所書記官は、その配当等の額に相当する金銭を供託しなければならない。

  А’枦異議の訴えが提起されたとき

92条1項

前条第1項の規定による供託がされた場合において、その供託の事由が消滅したときは、執行裁判所は、供託金について配当等を実施しなければならない。

抗告手数料の追納

  • 2016.07.11 Monday
  • 00:30

納付期間経過後の抗告手数料の納付に関する最高裁決定(平成27年12月17日)が出ましたので、紹介します。

その要旨は以下のとおりです。

抗告手数料の不納付を理由とする却下命令が確定する前に抗告手数料を納付すれば、その瑕疵は補正され、抗告状は当初にさかのぼって有効になる。

 

※最判昭和31年4月10日、最判昭和37年11月30日

下級審の訴訟書類の印紙に不足があつた場合に、上級審において納付すればその瑕疵は補正され、その書類は当初に遡つて有効となる。

開発許可の取消しを求める訴えの利益

  • 2016.06.11 Saturday
  • 00:25
開発許可の取消しを求める訴えの利益に関する最高裁判決(平成27年12月14日)が出ましたので、紹介します。

その判旨は以下のとおりです。
市街化調整区域内の開発許可については、開発許可に関する工事が完了し、検査済証が交付された後であっても、開発許可が取消されれば、開発区域における建築等ができなくなる。
そこで、市街化調整区域内の開発区域における建築等の制限を求める者は、工事が完了し、検査済証が交付された後においても、訴えの利益が失われない。

※訴えの利益:訴訟制度を利用して紛争を解決する必要性のことであり、これを欠く訴えは不適法として却下される。
※市街化区域内の開発許可については、開発許可に関する工事が完了し、検査済証が交付された後においては、取消を求める訴えの利益は失われる(最判平成5年9月10日.、最判平成11年10月26日)。
 

遺言の撤回

  • 2016.05.24 Tuesday
  • 09:19
遺言の撤回に関する最高裁判決(平成27年11月20日)がありましたので、ご紹介します。

その判旨は
赤色のボールペンで遺言書の文面全体に故意に斜線を引く行為は、その行為の有する一般的な意味に照らして、その遺言書の全体を不要のものとし、そこに記載された遺言のすべての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であるから、民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し、遺言を撤回したものとみなされる。
というものです。

※民法1024条前段
 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。

訴訟終了判決に対する控訴

  • 2016.05.07 Saturday
  • 14:57
訴訟終了判決に対する控訴に関し、最高裁判決(平成27年11月30日)がなされたので、ご紹介します。

その要旨は、第1審裁判所の和解による訴訟終了判決に対し、被告のみが控訴した場合、控訴審が第1審判決を取り消した上で原告の請求の一部を認容する本案判決をすることは、不利益変更禁止の原則に違反して許されないというものです。

したがって、訴訟終了が認められないと控訴審が判断した場合、原則として、事件は原審に差し戻しされることになります。

※訴訟上の和解の無効を主張する方法
 ヾ日指定の申立
 ∀族鯡妓確認の訴え
 請求異議の訴え

※訴訟終了判決
 訴訟が終了したことを確認する訴訟判決であって、訴訟上の和解が有効であるとの点について既判力を有しない(最判昭和47年1月21日)

※不利益変更禁止の原則
 第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみ、これをすることができる(民事訴訟法304条)。